●第二十回公演 『原稿用紙に雨は降るか ─その最期を、見届けろ─』 

─物語─
女が原稿を書いている。
1人の女が、知恵を尽くして男を甦らせる。それは、失ってしまった男の話。
「今日びさあ、流行らないんじゃないですか?」
「何が」
「一途な女」
無視して書き続ける女作家…の卵。数人だけの小さな出版社「月島出版」。
お情けでもらった小さな仕事、地域情報誌「見まっしコンパス」だけが頼みの綱。
「出版のアテもないのに書き続けて…それ仕事?」
それでも、女は書かずにはいられない。書くしかないのだ。
甦った男には、記憶が無い。女が望んだ男ではない。
軍靴を轟かせ、追っ手が列車に迫る。この世界では、電気を使うことは重罪なのだ!
「締め切り?」
「無理だって」
「ここで無理しないでいつするの!」
迫り来る無謀な締め切り。だがこれを乗り切れば、何かが起こるかもしれない!
居合わせた一同全員を巻き込み、エンディングへ向かって書き殴る女。
物語の中では、再び死につつある男。
歪んだ命は、やはり終わるべきなのか。いや、たとえ偽りの命だったとしても!
作家が物語を書き上げたとき、二つのラストシーンは果たして…。
それは作家がつむぐ物語。そして作家自身の物語。
ひとつは、死んでしまった男を甦らせる女のお話。そしてもうひとつは、小さな出版社のお話。
記憶は─────電気信号に宿る。