公演終了日記 一の字そして豪雲、西光法師ほか

『涌泉寺喧嘩事』にご来場いただき誠にありがとうございました。一の字たちは雪山を越えて歩きましたが、お客様の道中が吹雪にならなくて本当に良かったです。午前の部はご近所から地元のお客様中心に、午後の部は遠方からのお客様が数多く。客層がガラッと変わるのも大変楽しかったです。
芸術村など劇場で公演するのも勿論大好きなのですが、こうやって何処かへ出かけて行って劇場を作るというのは格別の楽しさがありますね。嬉々として舞台を作る我々についてきてくれた照明さん音響さんにも感謝です。

今作は鵜遊立地域活性化委員会さんからのご依頼でした。“町おこし”をするためにその町に伝わる物語をお芝居にする。とても素敵な挑戦だと思います。
パンフレットにも書きましたが、この物語は史実を元にしたフィクションです。とはいえ…かなり本当です。お芝居用にデフォルメしてはいますが、あれもこれも記録に残っている。何なら京に残る白山神社の鳥居が確かな証拠とも言える。調べれば調べるほど物語にしてくれと言わんばかりのエピソードが目白押し。どうしてこれがこんなにマイナーなんだ!と勢いよく台本を書き進めた結果、元々は30分ぐらいの上演で午前の部と午後の部の間はキッチンカーで俳優陣も楽しもうという計画が気がつけばどう考えても1時間を超える勢いになり、「このままでは午前のお客様が帰るのと午後のお客様が来るのが同時!」という…50分にまとめることが出来て本当に良かったです。

この物語は6人を中心に描いています。記録によれば神輿を担いで京へ向かう前に、6人が使者として比叡山に向かっているんですね。でもキャスト5人なんだよなあ…ということで、お客様に6番目の登場人物をお願いすることになりました。声が出せない中、無言でされど力強く拳を振り上げてくださった満席の六兵衛さん。本当にありがとうございます。いつか再演の暁には、大きな声で「もっとももっとも!」と一緒に叫びましょう。

そうそう、今作の珍しさはいつも羅針盤でアクション出演してくれていた志波重忠さんと田中麻衣子さんが台詞を喋ることです。『西遊記』とか掛け声だけでしたもんね。武術家さんに台詞を喋らせるという…これがね、新鮮です。良い刺激でした。志波さんもチラッと書いてましたが、私にとっても俳優の志波さんと共演するのは21年ぶり。調べたところ1999年~2001年ぐらいはよく一緒の舞台にいたのです。懐かしい…!
そして急遽助けてくれた宮崎裕香さん。寺嶋さん仕様になっていた三太郎や天台座主様を書き換える時間も無く、そのまま自分の役にしていただきました。本当に危なかった。そして本当に助かりました。

出演する羅針盤は私と能沢君だけだったはずが、終わってみればとっても羅針盤らしい作品となった『涌泉寺喧嘩事』。また上演したいものが増える日々ですね。コロナで客席数を削った演目も多くなり、どこかで見逃し公演シリーズ!みたいなことが出来たらと願っております。
舞台裏をたくさん支えていただいた鵜遊立地域活性化委員会の皆さん、中でも取りまとめいただいた麻衣子さん明美さん、本当にありがとうございました。そして一の字たちと共に京へ神輿を担いだ皆様、また次の旅路で!

(日記当番 平田知大)