●公演終了日記 柴田、そして伝兵衛(平田知大)

アンドロイドを狩る男達。

「星の煌めきは、デジタルの海に似ている」

新年あけましておめでとうございます。本年も劇団羅針盤を何卒よろしくお願いいたします。
そして、劇団羅針盤第49回公演『NOT A』ご来場頂き誠にありがとうございました!
ほぼ私と能沢くんの2人芝居+αだったわけですが、皆様にお楽しみ頂けていれば幸いです。矢澤さんがラストにしか出られなかった理由。ご来場頂いた皆様はもうお分かりですね? いやあ、めでたい。
めでたいと言えば…初詣に繰り出した京都の神社で「平田さん!」、北陸道のサービスエリアで「平田さん!」…すっかり悪さが出来ない身となりました。見つけてくれた皆様、本当にありがとうございました。北陸三県、あちこち出没しますのでぜひお声をかけてくださいね。動揺してちょっと挙動不審になりますが。

「ちと、肩が凝ったな」「はいただいまー」

「わざと負けることは出来ませぬぞ、若」

さて、『NOT A』を振り返ってみましょう。
このタイトルは矢澤さん発案です。羅針盤でたまに起こる「タイトルが先に決まっていて、それに合わせて物語を考える」作戦です。ええ、この場合タイトルを決めるのは私以外の誰かです。そうして私は必死こいてタイトルに合う物語を編み出すわけです。パンフレットにも書きましたが、夏にたまたま見た高校演劇の1作が人とアンドロイドの物語でした。(金沢桜丘高校さん上演の『あたらしいじんけんのはなし』) 人工知能の進化がこんなに身近な世の中になるなんてなあと思ったことと、タイトルのAが合致する。素晴らしい幸運でした。ラストは完全に矢澤さんありきでしたね。期せずして人と機械、そして命と魂を問う物語となりました。

「僕の手はー、兵器ー♪」

作ってもらって嬉しそうな能沢くん

そうして始まった『NOT A』の稽古。これがもう本当に楽しい。そして寂しい。毎日毎晩能沢くんと稽古し続けるわけですが、書けてない台本…どころかキャラクターの名前すら決まっておらず。最初は“厳しい男”と“優しい男”、“雷蔵”と“佐助”でした。女性陣はすっかり「きびおの衣装さー」「やさおのー」、やめるんだ! 雷蔵は昔から時代物の脚本を書くときに私がよくつけるんですが…ん? ライゾウ? 黒柴の可愛いアイツじゃないか…。稽古半分、設定や物語を考えるのが半分。とっても理想的な稽古場でした。ただ一つ…時々能沢くんと二人っきりになること以外は。何が辛いって、どんなに全力で台詞を言おうが、立ち回りで汗を流そうが、誰も見てないんですよ! 虚空に向かって芝居をする。これほど寂しいことはありませんでした。通し稽古の途中で終バスの時間になり、寺嶋さんがそっと稽古場を出る。アホなシーンやっても誰も笑わない…俺達、一体何やってんだろうですよ。
象徴的な道具と言えば、タンクと拳銃。タンクは龍さんに、拳銃は蒼竜くんに。ドラゴン達の力を借りて登場です。衣装はSFと江戸時代。常に着替えながらの芝居を可能にしたのは衣装陣と磁石の力。え? 磁石仕込んだせいで金具が縫い糸引きずってずれていく? 金属だもんねえ…。舞台の文字は長田さんでした。あ、ナイトさんもひたすら型紙切ってくれました。

出てきた拳銃は3種類。

この、磁石が、金具を!

動かないエレベーター。

そうそう、タイトルの秘密ですね。夏から秋頃、稽古場では次回公演のタイトルを考えていました。私の頭が『元号パレード』でいっぱいだったので、タイトル決めの〆切が迫っていたのです。矢澤さんがにこやかに手を挙げて…、
「今回は、能沢と平田が出ます。能沢と平田しか出ません。NOZAWAとHIRATAだけ。NOzawahiraTA。『NOT A』」
…なんじゃそりゃ! 本当になんじゃそりゃ!ですよ。
「あと強いて上げれば、矢澤あずなが出ない。ノットあずな」
…結局なんじゃそりゃ!ですよ。
と言いつつも。なんだかかなり好きな作品となりました『NOT A』。またいつか、ぜひやりたい。
(日記当番 平田知大)
今月末をもちまして、長田ひかるが退団します。気がつけば4年近く、最後の公演は音響サブとして効果音のキーボードをひたすら叩いていました。最終公演で挨拶させようと思ったのに呼び込みを忘れたのは、私です。本当に申し訳ない。

全てはこのラストシーンのために。

これにて、終演! あと産休!