●劇団羅針盤第25回公演 『空ニ浮カブ星ノ名ハ三日月』

──物語──
それはハードボイルドな物語。
男が帰ってきた。数年ぶりに訪れたその街で、女は男を待っていた。
けれど何もかもが変わっていた。いや──全て終わっていたのだ。
刑務所から帰ってきた男、一松鉄司。
「ご無沙汰してやす」
感動の再会、と思いきや刀振り回して拳銃ぶっ放してカーチェイスして大クラッシュ!
「は?」
それはハードボイルドな物語。のハズだった。
「あー、色々あったんすよ」
にこやかにトラブルを呼んでくる弟分に振り回されて。
「取引しない?」
始末に負えない女刑事に追い回されて。
「キミには期待している」
そして謎の男がめっちゃ気になることを言い始めた。
時代は変わった。あの頃とは違うのだ。
────まだ、俺たちは終わっていない。終わらせてはならない!
でもっていい人やら悪い人やら変な人まで何かいっぱいわらわら出てくるけれど、
実際問題全部で何人出てくるのか誰も知らない1人何役なんて数え切れない!
「一体これのどこがハードボイルドなんだ!」
走り回って、転げ回って、死線をくぐり抜け、血と、汗と、涙を流して。
そうしてようやく五条透子は振り返る。
「一松、お前は────」