公演終了日記 店長、爺さん、そして作・演出

『魔法少女続けました+Love!!』にご来場いただき誠にありがとうございました。お陰様でとても楽しい作品となりました。
実は2部構成となっていた今作。劇場でビックリして欲しいなと、なるべく伏せて宣伝しておりました。“いかに魔法少女を見せないか”という初演からのこだわりがこんなところにも来ているんですね。“肝心なところは見せない”。何もかもがお客様の想像力勝負。「前のあらすじのままで良いんじゃない?」参謀の力強い言葉をもらって、チラシには「────そして。」だけを追加しました。…最終的にパンフレットに役名を書かねばならないことに気づき「あ」となりましたが。

それにしても。これまで色んな作品を再演してきましたが、多少の加筆修正どころでは無かったのは初めてです。
私が不在の間に稽古場で盛り上がった皆が
「太田がスーパーの秘密に気づくまでが観たい!」とか、
「京華ちゃんが吉乃森14歳を演じる!どうですか!」とか、
一生懸命プレゼンしてくれました。私は「何の話?」と返した気もします。だって稽古場入った瞬間から詰め寄ってくるんだもの。ビックリしたよ。ちょっと怖かったよ。

初演を観てないお客様を置いてけぼりにはしたくない。だけどエピソードゼロという発想も捨てがたい。
そういえばかつてスターウォーズのⅢが公開されたときの「何から観る?」問題に「456123456」という地獄のような正解があったなと。つまり一気に観るべきなのだ。再演の本編を観てそのまま新作のエピソードゼロへなだれ込むことに決めました。初演と同じ?と思わせてからのアディショナルタイムです。本編40分に対してオマケが35分。羅針盤らしいじゃないかと。いっそ前編後編みたいなもんだよと。
皆のプレゼンを聞いたハズの私は、全く違うエピソードゼロを考えていました。なんて天邪鬼なんでしょう。

さあ、後は執筆です。ストーリーの条件は、
・前編のラストに出ていた宮崎さん能沢君は着替えのため後編序盤は出られない。
・受付もしている寺嶋さんは後編3シーンまで。前編からの着替えもあるよ。
・能沢君は本番3週間前まで『それスポ』に外部出演のため大勢のシーンに出すと稽古が出来ない。
・澤田さんは前編の衣装から、小松君は会場整理のスタッフ姿からそれぞれ着替える。が、これは下記に比べれば些細な問題だ。
・後編ラストの仕様上、宮崎さんと能沢君は後編中盤過ぎに退場して再び着替える時間が必要。退場する理由考えなきゃ。
・あと、能沢君は「刀振りたい」。
……条件多くない? 寺嶋さんが3シーンだけになった結果、おキクさんとハル姉さんが鍛冶場で出会ってなかったりします。能沢君も私か宮崎さんとの1対1しか無いのです。ほら、1対1ならいつでも稽古出来るしね。

ですが。そう。ここで重大な見落としが発生するのです。それも2つも。
問題①前編のラスト直前で退場する私は、すぐに始まる後編のオープニングも出ています。…ん?
問題②刀振りたいと言った能沢君は袴姿になりました。着替えるのに時間がかかります。それもエプロン→袴→エプロンなので2回変身です。…ん?

結果私の着替えは上着→澤田さんが着せてくれる。靴→小松君が履かせくれる。ええ、若手におんぶに抱っこですよ。舞台裏こそが戦場でしたよ。しかも着替えのタイミングは前編ラストシーン。吉乃森が太田に本音を語るあそこです。自分で書いておいてなんですが、なんて静かなシーンなんだ…。
そして能沢君は能沢君で後編ラスト直前、チヨと爺さんの別れの裏で「もっと賑やかにやってくれ代表!」と心の中で叫んでいたとかいないとか。どっちもしんみりしたシーンの裏で大急ぎという結果となりました。

かなざわリージョナルシアター2022“げきみる”、今年もお楽しみいただけたでしょうか。羅針盤も冬公演といえば“げきみる”になってますね。有り難い。
初めての試みだったれんが亭さんのドリンクチケットやペアお食事券、あるいは“げきみたの葉っぱアンケート”によるプレゼントなど、連動企画もお楽しみいただけていれば幸いです。
そうそう、羅針盤グッズのご注文もありがとうございました。年が明けてから、いつ頃お渡しするかの調整に入ると思います。雪の状況次第ではちょっと先にした方がいいかもしれませんね。気長にお待ちいただければ幸いです。

劇場で皆様に会いたかったのは私の方です。このために稽古を積んできたんだとキャスト&スタッフ一同が報われる瞬間です。かつてほどたくさん公演が打ちづらい世の中ではありますが、我々劇団羅針盤は来年も楽しい作品をご用意して皆様をお待ちしています。どうぞまた楽しい時間を過ごしにお越しください。それでは皆様、良いお年を!

(日記当番 平田知大)