●劇団羅針盤第26回公演『SLASH NUMBERS ──7人の“た”──』

──物語──
僕は渾身の力を込めて会議室の机を叩いた。思いのほか痛かった。
 「歴史に文句言うなよ。ずーっと昔からこうなんだから」
 「いいじゃない、これが日本のわびとさびなんだから」
錆びついた古典なんかクソくらえだ。どうせ赤点でしたよ。
 「はい次の議題ですが、何故桃太郎は──しつこいぞお前」
悪かったですね。僕は、この結末に納得できないんだ。
 「好きにしろ」
言いましたね? じゃあ好きにやらせて…痛い! すっごく痛い!
 「素人が。軽い気持ちで首を突っ込んだな」
 「ここは、会議室なんかじゃないの」
戦場っ!…ってあの、僕はヒーローになれないんでしょうか?
 「知るか。鏡見てから考えろ」
 「ついでに言えば、生きてここを出てからな」
それって絶対無理ってことじゃないですか!
 「後悔するなら初めから始めるな」
 「それが脱走ってやつだそうだ」
そりゃそうなんですけど…かぐや姫って、なんであんなに性格悪いんですか。
 「男どもの眼が曇ってたんでしょうよ」
 「今も昔も」
物語は変わらないんですね。くっそなんでだ。どうしてなんだ!
 「当たり前だろ? 思い出せよ。お前は誰だ?」
じゃあこれは、この物語は──、
「織姫に会いたいか彦星よ」
だから僕は──。
「さあ、銀河を駆ける大レースの始まりだ!」
命を懸けて…って急に何の話なんですか! 
「数字を切り裂け───物が足りた物語は者を語る」