ご来場いただき誠にありがとうございました。9月も半ばというのにまだ灼熱な毎日ですが、ここらで2023年を振り返っておきましょう。ほら、カーテンコールで「良いお年を」って言ったばっかりですからね。
【トランジスタ★ガール!!の作り方】
スチームパンクがやりたい!───宮崎さんの発言だったと思います。
そのあとスチームパンクって何ですか?という若い衆にめっちゃ説明した気がします。要するにラピュタだ!って言いきったかもしれません。
刀振りたいなあ───能沢くんはいつも通りでした。
機械が世の中を動かしつつも、まだなんだか不便な世界。加えて刀が出てくるってどこやねん。
日本に近い……けれど西洋の方がいいなあ───あ。あるじゃないか私の地元に。京都府八幡市にはエジソンの記念碑があるんです。白熱電球に使われた竹林に囲まれた、石清水八幡宮という大きな神社の中に。
もしもエジソンに似た“エンジン”さんが主人公だったら───羅針盤らしいお話作りの始まりです。
出るわ出るわ天才の変なエピソード。大変なエピソード。周りが超大変なエピソード。ということで稽古場で名前会議です。
資金集めのエピソードからマージョリーが。
新聞作りと後の宣伝戦略からルシールが。
そして竹を手に入れるからには東洋人、しかも西洋人には発音しにくい名前のせいで変なあだ名になる東次郎=アルマジローが生まれました。
ただ、メアリーアンの名前だけは実在です。エジソンの身近にあるんですよ?
なるべく当時の世相に近づけたく、エジソン以外は海を越えてきた移民たち。職業婦人の壁と奮闘。そういう意味ではマージョリーとルシールは対極かもしれませんね。
入りきらなくて泣く泣く削ったシーンもいっぱいです。
その分?稽古しながら増えたセリフもいっぱいです。そして、上演。
【初演と再演の狭間に】
がまさかの1回のみになり。
2023年が終わらず、すぐに再演したい!となりました。
皆さんが楽しみにしてくれた以上に、私たちが上演したかったのです。
「最短で8月」
「8月って夏?」
「そうだけどどうした?」
「衣装って冬設定ですよね」
「クリスマス前後の話だからな」
「暑くないですか?」
「もう十分熱い芝居だから大丈夫」
「あ、そっか」
「何が大丈夫なんだろう」
「待てみんな。それよりも」
楽屋から出た我々の目に飛び込んできたのは───初日だけで終わってしまった舞台セット。
このまま置いて帰る手はないものか?
一瞬良からぬ考えがよぎりましたが、あきらめて撤収作業です。ただ一つ難点は───女性陣がほぼいない。
舞台の片付けはいいんですよ。私か能沢君がいれば手順はなんとかなります。
「衣装の片付け、だと?」
大工仕事ばかりにかまけてきたツケが回ってきたのです。そして何より女子楽屋に広がる私物たち───何に使うかも分からない小物たち。
「化粧品、かな?」
「誰の?」
「とりあえず詰めとけ」
「これ何の部品?」
「詰めとけ詰めとけ」
このどさくさで一部型紙を紛失し後日宮崎さんにこっぴどく恨まれたのはまた別のお話。残す方と捨てる方が逆だったとは…。
【リベンジ!!の作り方】
再演ならではの利点を活かすということで───
「パワーアップさせたいよね」
衣装も小道具も改良したり増やしたり。私も途中で変身です。
舞台の真ん中に歯車欲しいなあと言ったら
「両脇の柱にも欲しくない?でっかいの」───作りましょう。
そして。
新しい役を考えましょう。
初演から続投のキャラクター達はエジソンの周りにいたであろう人々。
新キャラクターはエジソンのせいで仕事を失った人がいいな。
初演時に消されたエピソードの復活です。マージョリーたちの国以外で、どこかなあ……ふと、自転車生活で真っ黒に灼けた谷内くんを見て誰かが言いました───「ラテンっぽくない?」
晴れてメキシコ系のガルベス君となりました。
そして劇場入り。
「どうして」
「なんだ」
「どうして1からセットを組むんですか」
「片付けたからだ……一緒に片付けただろ?」
「8か月そのままにしておけば良かった」
「色んな人に怒られるぞ」
「照明さんだって1から吊りなおしてるんだから」
「プログラムは結構使いまわせているそうです」
「ずる…くない!」
なんだか覚えのある工程をもう一度進めながらセットをくみ上げました。その分、初登場の大きな歯車取り付けは新鮮でしたね。
20周年ということもあってか、なんだか同窓会のような日々。駆けつけてくれた皆、本当にありがとう。(ちなみにゲネプロの写真は川端大晴くんに撮影してもらいました)
初演の企画からリベンジ公演まで、1年ぐらいかかった『トランジスタ★ガール!!』。何故か冬仕様だった衣装のおかげか、キャスト全員よく汗をかきました。上演できることがこんなに楽しく、幸せなことだったんだなあとあらためて思います。名残りは惜しいですがいつの日かまた上演できる日を願って、ひとまず終演です。ご来場ありがとうございました!
(日記当番 平田知大)