●劇団羅針盤第29回公演 『西遊記 ~最果ての勇敢なる帰結を語る~』

─物語─
その石ザルは500年も待っていた。
固い意志の力で硬い石になっていたのだ。
六道輪廻の因縁を越えてただ、待つために。
西へ西へと旅するその人物を。
遥か東の都から、遥か遥か遥か彼方の西にあるという天竺へ。
ありがたい経典を手に入れて、全ての人をもれなく救うというその人物を。
猿豚河童のお供を連れて、数多の妖魔と戦いながら西へと向かう三蔵法師。
三蔵「都の人々に応援してもらった。最も勇気の西遊記だ」
悟空「そんなの勇気じゃねえ、短気で損気って言うんだよ」
八戒・悟浄「勘気を起こすなよ石ザル!」
悟空「兄貴と呼べよ!」
無機物だった石ころが、長い歳月を経て有機物となって。
金斗雲に跨りひと飛び十万八千里、伸縮自在の如意棒振り回し、天下無双の雲上人。
悟空「でくの坊にはでくの坊なりの誇りがあるんだよ」
金角「埃まみれの男が何を言うか!」
しかしこの悟空は─────雲に乗れないのだ。
三蔵「悟空、お前は…!」